なわ》ち、他《た》の一面の方である、偶然といえば偶然の事だが、何とあまりに不思議な事ではないか、ものの一年になるやならずして、しかも、死んだ女の言《ことば》の如《ごと》く、同門生の手に、この二面の箏《こと》が渡ったとは、実にこの上ない不思議ではないか、人の思いは恐怖《おそろ》しいとは兼《かね》て聞き及ぶが、箏《こと》の凄いものだという事と関係して、私は、よく知人に談《はな》す物語である。



底本:「文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会」ちくま文庫、筑摩書房
   2007(平成19)年7月10日第1刷発行
底本の親本:「怪談会」柏舎書楼
   1909(明治42)年発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2008年9月22日作成
青空文庫作成ファイル:
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