雪の透く袖
鈴木鼓村
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)繰《く》る
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)明治|廿二《にじゅうに》年
−−
古びた手帳を繰《く》ると、明治|廿二《にじゅうに》年の秋、私は東北の或《ある》聯隊《れんたい》に軍曹をして奉職していたことがあった。丁度《ちょうど》その年自分は教導団を卒業した、まだうら若い青年であった。
当時、その聯隊《れんたい》の秋季機動演習は、会津《あいづ》の若松《わかまつ》の近傍《きんぼう》で、師団演習を終えて、後《のち》、我|聯隊《れんたい》はその地で同旅団の新発田《しばた》の歩兵十六|聯隊《れんたい》と分れて、若松から喜多方《きたかた》を経て、大塩峠《おおしおとうげ》を越え、磐梯山《ばんだいさん》を後方《うしろ》にして、檜原《ひばら》の山宿《やまじゅく》に一泊し、終《つい》に岩代《いわしろ》、羽前《うぜん》の境である檜原峠《ひばらとうげ》を越えて、かの最上川《もがみかわ》の上流の綱木《つなき》に出《い》で、そして米沢《よねぎわ》まで旅次《りょじ》行軍を続けたのであった。
時は十一月の中
次へ
全10ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 鼓村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング