てとどまることを知らず、ついに合して始めて完全な宇宙をなす。人はおのおの希望と平和の天空を新たに建て直さなければならぬ。
 現代の人道の天空は、富と権力を得んと争う莫大《ばくだい》な努力によって全く粉砕せられている。世は利己、俗悪の闇《やみ》に迷っている。知識は心にやましいことをして得られ、仁は実利のために行なわれている。東西両洋は、立ち騒ぐ海に投げ入れられた二|竜《りゅう》のごとく、人生の宝玉を得ようとすれどそのかいもない。この大荒廃を繕うために再び女※[#「女+咼」、第3水準1−15−89]《じょか》を必要とする。われわれは大権化《だいごんげ》の出現を待つ。まあ、茶でも一口すすろうではないか。明るい午後の日は竹林にはえ、泉水はうれしげな音をたて、松籟《しょうらい》はわが茶釜《ちゃがま》に聞こえている。はかないことを夢に見て、美しい取りとめのないことをあれやこれやと考えようではないか。
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     第二章 茶の諸流

 茶は芸術品であるから、その最もけだかい味を出すには名人を要する。茶にもいろいろある、絵画に傑作と駄作《ださく》と――概して後者――があると同様に。と言
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