ゐた。夫人が母君のお見舞にアメリカに帰られたついでにペルシヤ猫を買つて来られた。「ブリュ・クラウド」つまり「青い雲」といふ名で、青黒い毛のすばらしい大猫だつた。
夫人は、大谷大学の教授鈴木大拙博士の夫人ビアトリス女史で、もう今は世に亡いかたである。私は夫人に厚いお世話になつた。アイルランド文学の本がたくさん丸善に来てゐるから、読んでみては? とすすめて下さつたのも夫人であつた。大拙博士もその頃はおわかくて、お茶を一しよに上がりながら、片山さん、また猫が二ひきふえましたよと、猫の噂をなさつた。温かい思ひ出である。その過去からいま「トラ子」が使に来たやうな気がする。
底本:「燈火節」月曜社
2004(平成16)年11月30日第1刷発行
底本の親本:「燈火節」暮しの手帖社
1953(昭和28)年6月
初出:「婦人朝日 第四巻第一号・新年特別号」朝日新聞社
1949(昭和24)年1月
※初出時の表題は、「仔猫の『トラ』―温い思い出―」です。
入力:竹内美佐子
校正:富田倫生
2008年12月5日作成
青空文庫作成ファイル:
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