に煮たもの。サラダすこし。うす紅のアイスクリーム、ちまき屋のまんぢゆうを蒸したのとコーヒ。みごとな色の料理で、ソーザイランチ以上と見えた。つぎは七月頃、パイは出さず冷肉だつたと思ふ。ほそいんげんの黒ごま和へ。小えび、アスパラ。特別の御馳走はフルーツサラダで、バナナ、パインアップル、桃やネーブル、ほし葡萄と胡桃も交り豪しやなもので、食後は長崎カステラとおせん茶であつた。
夫人が帰国する時、ある奥さんと私と、送別のために小さいお茶料理に夫人を招待した。小座敷にむつましく坐つて、鯛のさしみ、大きな鮎の塩やき、栗のふくませなぞを夫人はよろこんでくれた。そしてきんこ[#「きんこ」に傍点]と小かぶのみそ汁をほめた。きんこ[#「きんこ」に傍点]はどんな物かと訊かれて、私よりも英語の話せる奥さんが、きんこ[#「きんこ」に傍点]は、海にゐる時は黒く柔かい生物でナマコと呼ばれる。ナマコを乾したものがきんこ[#「きんこ」に傍点]であると、しどろもどろに説明したが、その黒く柔かい物がB夫人にはとても分らないだらうと思つた。それから「おそば[#「そば」に傍点]はお好きですか」と訊くと、「ふうん!」と夫人は考へ
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