や新刊の本が読めたら気楽だらうと思ふ。むづかしい本と軽いよみ物と交ぜて気分次第に読む。さういふ処で若い人と年寄とが親しくなつて、各の世界は無限にひろがつて行くこともあるだらう。そんな事を考へて私は明日よりもつと遠い日に希望を持つのである。
 どんな事にも先立つものがなければ仕方がない。今の時代には会社の使ひこみとかお役所の秘密の何々とかいふ場合、大てい三千万四千万といふやうな数字が新聞に出る。そんな多額のお金がどこともなく眠つてゐるものらしいけれど、そんなに沢山なくても、もつともつと小さいものでも天から降つて来るやうな奇蹟を待たう。奇蹟といふものは昔もあつて、今もあると私は信じる。



底本:「燈火節」月曜社
   2004(平成16)年11月30日第1刷発行
底本の親本:「燈火節」暮しの手帖社
   1953(昭和28)年6月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:竹内美佐子
校正:林 幸雄
2009年8月17日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aoz
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