ともしい日の記念
片山廣子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)酵《たね》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ほつけ[#「ほつけ」に傍点]
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 終戦直後わが国にゐた外人たちの中で、兵隊さんたちはみんな一食づつきまつた配給であつたから、その人たちはそれでもよかつたが、家族づれの一家で軽井沢に暮してゐる人たちなぞ私たち以上にともしかつた。彼らは私たちのやうに蓮根や牛蒡は食べられず、たべ馴れた野菜の馬鈴薯とかきやべつ玉葱と、それにきまつた配給のパンを食べ一度一度に缶づめの肉をたべてゐた。私と同じ宿屋の二階に二人の子供があるアメリカ人一家がゐたが、この人たちは運よく総司令部に勤めるやうになつて段々らくになつて来た。それでもパンや肉を余計に食べることは出来ないから、夕飯の時はきまつた量のパンと一品の肉料理、野菜と、そのあとでお粥をたべた。米一合に小さいきやべつならば一つ、大きいのならば半分ぐらゐ、こまかくきざんで米と一しよにぐたぐた煮ると、米ときやべつがすつかり一つにとけ合つてしまふ。うすい塩味にして、それに日本葱を細かく切つて醤油だ
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