せき》は頼まざるに夜通し泥棒の用心となる。かくの如く路地は一種云ひがたき生活の悲哀の中《うち》に自《おのづ》から又深刻なる滑稽の情趣を伴はせた小説的世界である。而《しか》して凡《すべ》て此の世界の飽くまで下世話《げせわ》なる感情と生活とは又この世界を構成する格子戸、溝板《どぶいた》、物干台、木戸口、忍返なぞ云ふ道具立《だうぐだて》と一致してゐる。この点よりして路地は又|渾然《こんぜん》たる芸術的調和の世界と云はねばならぬ。



底本:「日本の名随筆90 道」作品社
   1990(平成2)年4月25日第1刷発行
   1997(平成9)年5月20日第6刷発行
底本の親本:「荷風全集」岩波書店
   1963(昭和38)年2月発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2009年12月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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