小暗《おぐら》い片隅から青葉の枝と幹との間を透《すか》して、彼方《かなた》遥かに広々した閑地の周囲の処々《しょしょ》に残っている練塀《ねりべい》の崩れに、夏の日光の殊更明く照渡っているのを打眺め、何という訳もなく唯|惆恨《ちゅうちょう》として去るに忍びざるが如くいつまでも彳《たたず》んでいた。私たちは既に破壊されてしまった有馬の旧苑に対して痛嘆するのではない。一度《ひとたび》破壊されたその跡がここに年を経て折角|荒蕪《こうぶ》の詩趣に蔽われた閑地になっている処をば、更に何らかの新しい計画が近い中にこの森とこの雑草とを取払ってしまうであろう。私たちはその事を予想して前以《まえもっ》て深く嘆息したのである。
私は雑草が好きだ。菫《すみれ》蒲公英《たんぽぽ》のような春草《はるくさ》、桔梗《ききょう》女郎花《おみなえし》のような秋草にも劣らず私は雑草を好む。閑地《あきち》に繁る雑草、屋根に生ずる雑草、道路のほとり溝《どぶ》の縁《ふち》に生ずる雑草を愛する。閑地は即ち雑草の花園である。「蚊帳釣草《かやつりぐさ》」の穂の練絹《ねりぎぬ》の如くに細く美しき、「猫じゃらし」の穂の毛よりも柔き、さて
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