。しかしつらつら思えば伊太利亜《イタリヤ》ミラノの都はアルプの山影《さんえい》あって更に美しく、ナポリの都はヴェズウブ火山の烟《けむり》あるがために一際《ひときわ》旅するものの心に記憶されるのではないか。東京の東京らしきは富士を望み得る所にある。われらは徒《いたずら》に議員選挙に奔走する事を以てのみ国民の義務とは思わない。われらの意味する愛国主義は、郷土の美を永遠に保護し、国語の純化洗練に力《つと》むる事を以て第一の義務なりと考うるのである。今や東京市の風景全く破壊せられんとしつつあるの時、われらは世人のこの首都と富嶽との関係を軽視せざらん事を希《こいねご》うて止《や》まない。安永頃の俳書『名所方角集《めいしょほうがくしゅう》』に富士眺望と題して
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名月や富士見ゆるかと駿河町《するがちょう》 素竜
半分は江戸のものなり不尽《ふじ》の雪 立志《りゅうし》
富士を見て忘れんとしたり大晦日《おおみそか》 宝馬
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十余年|前《ぜん》楽天居《らくてんきょ》小波山人《さざなみさんじん》の許《もと》に集まるわれら木曜会の会員に羅臥雲《らがうん》と
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