最もよくその偉大を示すというべきである。古来その眺望よりして最も名高きは赤坂霊南坂上《あかさかれいなんざかうえ》より芝|西《にし》の久保《くぼ》へ下りる江戸見坂《えどみざか》である。愛宕山《あたごやま》を前にして日本橋京橋から丸の内を一目《ひとめ》に望む事が出来る。芝|伊皿子台上《いさらごだいうえ》の汐見坂《しおみざか》も、天然の地形と距離との宜《よろ》しきがために品川の御台場《おだいば》依然として昔の名所絵に見る通り道行く人の鼻先に浮べる有様、これに因《よ》ってこれを観《み》れば古来江戸名所に数えらるる地点|悉《ことごと》く名ばかりの名所でない事を証するに足りる。
今市中の坂にして眺望の佳《か》なるものを挙げんか。神田お茶の水の昌平坂《しょうへいざか》は駿河台岩崎邸門前《するがだいいわさきていもんぜん》の坂と同じく万世橋《まんせいばし》を眼の下に神田川《かんだがわ》を眺むるによろしく、皀角坂《さいかちざか》[#ここから割り注]水道橋内駿河台西方[#ここで割り注終わり]は牛込麹町の高台並びに富嶽《ふがく》を望ましめ、飯田町《いいだまち》の二合半坂《にごうはんざか》は外濠《そとぼり》を
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