正宗谷崎両氏の批評に答う
永井荷風
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)勢《いきおい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)小説|及《および》
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(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「言+闌」、第4水準2−88−83]
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去年の秋、谷崎君がわたくしの小説について長文の批評を雑誌『改造』に載せられた時、わたくしはこれに答える文をかきかけたのであるが、勢《いきおい》自作の苦心談をれいれいしく書立てるようになるので、何となく気恥かしい心持がして止《よ》してしまった。然るにこの度は正宗君が『中央公論』四月号に『永井荷風論』と題する長文を掲載せられた。
わたくしは二家の批評を読んで何事よりもまず感謝の情を禁じ得なかった。これは虚礼の辞ではない。十年前であったなら、さほどまでにうれしいとは思わなかったかも知れない。しかし今は時勢に鑑《かんが》みまた自分の衰老を省みて、今なおわたくしの旧著を精読して批判の労を厭《いと》わない人があるかと思え
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