黄昏の地中海
永井荷風
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)葡萄牙《ポルトガール》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三|哩《マイル》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)はで[#「はで」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)チラ/\
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ガスコンの海湾を越え葡萄牙《ポルトガール》の海岸に沿うて東南へと、やがて西班牙《スペイノ》の岸について南にマロツクの陸地と真白なタンヂヱーの人家を望み、北には三角形なすジブラルタルの岩山《いはやま》を見ながら地中海に進み入る時、自分はどうかして自分の乗つて居る此の船が、何かの災難で、破《こは》れるか沈むかしてくれゝばよいと祈つた。
さすれば自分は救助船に載せられて、北へも南へも僅か三|哩《マイル》ほどしかない、手に取るやうに見える向《むかう》の岸に上《あが》る事が出来やう。心にもなく日本に帰る道すがら自分は今一度ヨーロツパの土を踏む事が出来やう。ヨーロツパも文明の中心からは遠《とほざか》つて男ははで[#「はで」に傍点]な着物き
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