地二丁目十五番地)にあって専《もっぱ》ら俳諧《はいかい》の書巻を刊行していたのであるが拙著『すみだ川』の出版を手初めに以後六、七年の間|盛《さかん》に小説及び文芸の書類を刊行した。書店の主人みずからもまた短篇小説集『遅日』を著《あらわ》した。谷崎《たにざき》君の名著『刺青《しせい》』が始めて単行本となって世に公《おおやけ》にせられたのも籾山書店からであった。森鴎外《もりおうがい》先生が『スバル』その他の雑誌に寄せられた名著の大半もまた籾山書店から刊行せられた。
大正五年四月籾山書店は旧版『すみだ川』を改刻しこれを縮刷本《しゅくさつぼん》『荷風|叢書《そうしょ》』の第五巻となし装幀《そうてい》の意匠を橋口五葉《はしぐちごよう》氏に依頼した。
大正九年五月|春陽堂《しゅんようどう》が『荷風全集』第四巻を編輯刊行する時『すみだ川』を巻頭に掲げた。この際わたくしは旧著の辞句を訂正した。
大正十年三月春陽堂が拙作小説『歓楽《かんらく》』を巻首に置きこれを表題にして単行本を出した時再び『すみだ川』をその中に加えた。
昭和二年九月|改造社《かいぞうしゃ》が『現代日本文学全集』を編輯した時その
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