のであります。私もこれには同感であります。同時にまた、東北地方の農家の炉端《ろばた》を歌ってよくその地方色を出している詩として、佐伯郁郎君の『故里の爐辺を想ふ』をも見逃すことは出来ない。
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「故里の爐辺を想ふと
心が明るくなる。

呑助の夫を助けて来た老婆の手
長い間土を掘つて来た老爺の手
多数の家族を抱へて苦闘してゐる若者の手
ずんぐりして 荒れてはゐるがみずみずしい娘の手、
取入れも済んで
木枯が吹く頃になると
今まで離れ離れであつたそれ等の手が一緒に爐辺に集まるのだ、
大根漬を噛み
渋茶を啜つて
作物《さく》の出来不出来
陽気の加減を語り合ひ
ぼんぼんと燃える焚火にあつたまるのだ、
喜びも 悲しみも
みんなそこで語り合ひ
みんなそこから生れるのだ、
故里の爐辺を想ふと心が明るくなる。」
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 佐伯郁郎君はそう歌っています。これは東北地方特有の風景であります。東北独特の地方色であります。

 芭蕉の『奥の細道』の中に松島の風光が詳しく記されてあります。
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「抑ことふりにたれと 松嶋は扶桑第一の好風にして 凡洞庭西湖を
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