にかかると、跛《びっこ》でも引くように、首を上げ下げして、歩調を乱すようにしては立ち止まるのであった。
「脚が悪いのかな?」
 伝平はそう言って、何度も振り返って見たが、坂の中途で馬を停めてしまった。
「可哀想な野郎だよ。」
 伝平はそう言いながら、六個の薪束を、四個に減らした。そして、伝平は、自分が背負っていた二個に、さらにその二個を加えた。立ち上がると、四個の薪束の重さで、伝平はよろよろした。ちょうどそのとき、路の上に垂れ伸びていた木の枝が、馬の顔をばさりと叩いた。馬は驚いて跳《は》ねあがった。その途端に、馬は、崖に脚を踏み外《はず》してしまった。
「あっ! あっ! あっ!」
 伝平は叫びながら手綱《たづな》を手繰《たぐ》ったが、もう間に合わなかった。四個の薪束の重さで、足がよろよろ浮いているところを、崖に墜落して行く馬の手綱にぐっと引かれて、伝平はひとたまりもなく谷底へ伴れて行かれてしまった。
       *
 伝平の怪我も、馬の怪我も、殆んど、致命傷だった。
「耕平の怪我はどうだあ! 耕平の方は俺より酷《ひど》くねえか? 生命《いのち》がありそうか!」
 伝平はそう譫言《うわ
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