を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》ってその記事を読んだ。
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二十日午後七時半、京橋区銀座西四丁目宝石貴金属商新陽堂の店頭に、年齢二十二三の洋装婦人が現われ、客を装い、宝石入純金指環三個を窃取《せっしゅ》して立ち去ろうとするところを、私服にて張り込み中の○○署杉山刑事に捕えられ、直ちに引拉《いんら》された。犯人は盗癖を持つ良家の令嬢のようでもあるが、一時に三個を窃取した点から推して、いつも同一手段で市内各所でこの種の店頭を荒らし廻っていた窃盗常習犯の疑いがあり、目下厳重に取り調べ中である。
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 伸子は顔が真っ赤になった。彼女は何度もその記事を繰り返して読んだ。そして彼女は、姉の秘密な生活に対する自分の疑いが、最早《もはや》それで解《と》けてしまったような気がするのだった。
 併し、それが解《わか》って見たところで、伸子にはどうしようも無かった。彼女は胸の中を掻《か》き※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]《むし》りたいような気持ちで深い深い溜め息を一つした。そして彼女はもう一度ベッドの上へ横になった。

     二
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