そう云うと俺ばかり馬鹿に食意地が張ってるようだが……」
「工場から、食う物は出来ねえか知んねえが、俺、工場さでも行って働くより仕様がねえ。耕す土地がねえのだから、どうも仕様がねえからな。」
耕作価値が急に所有価値に変り、所有価値が暴騰したために、却って職を失った耕地を持たない小作百姓達は何れにしても土地の発展を欣《よろこ》んではいなかった。
「われわれ、百姓でありながら、始めっから土地を持ってねえのだから、どうも仕様がねえ。働く分にゃ、畠だろうが、工場だろうが、何処で働いたって同じことだろうから。」
「それさ。われわれの暮しにだって、工場で出来たものも必要なのだからな。」
「俺、工場さ行くだ。百姓が出来なくなっても、俺、工場でせえ使って貰えば、それでいいだ。」
四
畠の中に開かれた平坦な新道は、雨の降る毎にひどくぬかった。わけても、雨の降り続く季節には苗代のような泥濘になった。
その新道端に店を開き、所有地を住宅のために貸してそれで生活をして行こうと云う人達は、新道へ砂利を敷くための寄附金を蒐《あつ》めに奔走した。
部落内の農家へは、自作百姓の豊作と栄三と金平
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