にはいられなかった。併し、それは例によって言葉にはならなかった。ただ一言「遅くなりました」とさえ言うことの出来ない峻に対して、私はもちろん「どこを歩き廻っているんだ?」というような質問の出来る人間ではない。私は、一緒に歩いていたのなら、一緒に帰って来ればいいのにというようなことを身体《からだ》の中のどこかで呟《つぶや》き、この二人の上に何かしら微笑を感じながら書斎に戻ったのだった。
[#地から2字上げ]――昭和六年(一九三一年)『今日の文学』一月号――
底本:「佐左木俊郎選集」英宝社
1984(昭和59)年4月14日初版発行
初出:「今日の文学」
1931(昭和6)年1月号
入力:田中敬三
校正:小林繁雄
2007年7月23日作成
青空文庫作成ファイル:
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