が、先ず、ここらあたりから調査の歩を進めて行ったら、何とかものになるのじゃないかね。では、これで僕は失敬するが、この特種、二木検事の談として、今日の夕刊に掲載していいだろうな」
「き、君、そりゃアちょっと待ってくれないかな」
 二木検事は再びみじめな顔つきをした。

 その同じ頃、雑誌記者の津村は、自分のアパートのベッドの上に、ネクタイを外してひっくり返っていた。
 編輯長の命令で、陸軍大臣の談話をとるために、この三四日、足手|摺古木《すりこぎ》に追っかけまわして、やっとつかまえることが出来て、吻《ほ》っとしているところだった。
 吻《ほ》っとして見ると、再び、探偵作家の星田代二のことが思い出された。愈々《いよいよ》検事局に廻されて、今日は、検事の第一回訊問の行われる日だ。あれだけ証拠の数々を突きつけられて、逃れる道があるのだろうか。サイカク――ロククウ、西鶴――六九……種に苦しんだ活動屋の思い出……洋装の女――どこかで見たような女だが……村井はどうしたろう――あれから自宅へも社へも寄り附かんというが……あっ、そうだっ!
 津村は突然おどり上った。大急ぎで、ネクタイを結び直した。――な
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