えます。一! 二! 三!」
 万はそう言って手を振った。
「さて、あの杯は、その向こうにおいでになる福禄寿のところへ、参っているはずであります。福禄寿の懐中を改めて下せえ。」
 万はそう言ってお辞儀をした。
 一座の興趣《きょうしゅ》は、仮装の福禄寿に集まって行った。福禄寿は早速、その周囲の二、三人の手で帯を解《と》かれた。同時に三つの杯が転がり出た。万は急霰《きゅうさん》のような拍手に包まれた。
[#地から2字上げ]――昭和八年(一九三三年)『大阪朝日新聞』一月二十二日号――



底本:「佐左木俊郎選集」英宝社
   1984(昭和59)年4月14日初版
入力:大野晋
校正:湯地光弘
1999年12月6日公開
2005年12月20日修正
青空文庫作成ファイル:
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