錯覚の拷問室
佐左木俊郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)崖《がけ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)純情|無垢《むく》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)10[#「10」は縦中横]
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集落から六、七町(一町は約一〇九メートル)ほどの丘の中腹に小学校があった。校舎は正方形の敷地の両側を占めていた。北から南に、長い木造の平屋建てだった。
第七学級の教室はその最北端にあった。背後は丘を切り崩した赤土の崖《がけ》だった。窓の前は白楊《はくよう》や桜や楓《かえで》などの植込みになっていた。乱雑に、しかも無闇《むやみ》と植え込んだその落葉樹が、晩春から初秋にかけては真っ暗に茂るのだった。その季節の間はしたがって、教室の中も薄暗かった。そして、すぐその横手裏は便所になっていた。だから、生徒たちはこの教室の付近にはほとんど集まらなかった。いつも運動場の南の隅から湧《わ》き起こる生徒の叫びを谺《こだま》している、薄気味の悪い教室だった。
受持ちは鈴木《すずき》という女教員だった。
鈴木教
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