再度生老人
佐左木俊郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)焼和尚《やけおしょう》という
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)赤くてかてか[#「てかてか」に傍点]と
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私が十一の頃、私の家の近所の寺に、焼和尚《やけおしょう》という渾名《あだな》のお坊さんが住んでいた。私はこれから、この話を、その焼和尚のことから始めようと思う。……
焼和尚は坊さんのくせに、大変女が好きだった。そして、彼の前身を知っている人の話によると、彼は、若い時分には盛んに発展し、やたらと女を買ったものだということだった。彼の頭が、薬罐《やかん》のように、赤くてかてか[#「てかてか」に傍点]と禿げているのも、実は焼傷《やけど》の跡ではなくて、その頃に引き受けた悪い病気の名残りなそうである。それでも焼和尚は、私達には焼けてこうなったのだと言ってきかせるのだった。
焼和尚は、一人で住んでいた。細君と、めっかち[#「めっかち」に傍点](眇)の息子とがあったが、この二人は半里ほどはなれた町に住ませて置いて、自分一人植木を弄《いじ》ったり、軸物の観賞したり、彫り
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