子はそう遣《や》る瀬《せ》ないように叫びながら、布団《ふとん》に顔を押し当てて、静かに歔欷《すすりな》いた。
「美津! 俺が来たのに泣いたりするなあ。泣くなら帰るで。」
 併し、嘉三郎の頬にも、涙が伝わって来ていた。
「そこに栗の木があるな? 這入《はい》って来るどき、葉の雨滴《あまだれ》が顔さかかって……」
 嘉三郎はそう言って眼のあたりを拭った。
「お父さん! 今まで黙っていて、本当に申し訳のねえことで。恩を忘れたようなごとして……」
「何を水臭いことを言うんだ。それより、何だってこんなところにいるんだ。東京さでも行けばいいじゃねえか? こんなどこで俺の恥まで晒《さら》すより、東京さでも行けばいいじゃねえか? 馬鹿な奴等だっ! 東京さでも行って立派になって来《こ》う! 忠太郎!」
「それも考えでいだのです。併し、お父さんの方に誰も稼《かせ》ぎ手《て》がいなくなるごと考えたりして……」
「馬鹿なっ! 稼がせるために忠太郎を美津の聟《むこ》にしたとなると、それこそ、世間さ顔向けが出来なくなる。何も心配しねえで、自分達だけ、立派になって来う。」
「それより、お父さんさ、酒でも買って来たら
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