季節の植物帳
佐左木俊郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)形態《けいたい》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一人|哀《かな》しきもの思いに

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)うめのきごけ[#「うめのきごけ」に傍点]
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     序言

 植物のもつ美のうちで、最も鋭く私達の感覚に触れるものは、その植物の形態《けいたい》や色彩による視覚《しかく》的美であろう。それから嗅覚《きゅうかく》的美、味覚《みかく》的美といった順序ではないかと思う。併し、私達の心の中のロマンチストは、その伝説を聞き、名称の持つ美から、未知の植物に憧《あこが》れることが少なくない。そしてまた私達のセンチメンタリストは、廃墟《はいきょ》に自然が培《つちか》う可憐《かれん》な野草に、涙含《なみだぐ》ましい思いを寄せることがある。
       ○
 植物の生理的作用は、その形態と色とによって植物体の美を表現する。深緑の葉、真紅《しんく》の花、さては薄紫の色に、或いは淡紅色に…… そして春の野は緑に包まれ、夏の森林は深緑がしたたり、秋の林
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