か、一生かかったってできるかできねえか分かりゃしめえ。それを……」
「馬鹿正直に働いていたんじゃとても……」
「なにを? 馬鹿正直に働いていたんじゃ? ちぇっ! 利巧に立ち回ればできるっていうのか?」
「利巧に立ち回って悪いことでもしねえかぎり、おれだけじゃなく、だれにだって!」
「何を言ってやがるんだ。屁理窟《へりくつ》ばかりつべこべと並べやがって。いったい、てめえらはだれのお陰で育ったと思っているんだ? それも忘れやがって、わしに腹癒せがましいことができると思うのか?」
「旦那《だんな》! 旦那は少し思い違いをしているようですけど……」
「思い違い? 何が思い違いだ? てめえ、とにかくそこへ手を突いて謝れ!」
喜平は長靴の踵《かかと》で荒々しく床を蹴った。正勝は唇を噛《か》んで、じっと喜平の顔を見詰めたまま黙っていた。
「謝るのがいやなのか? 謝る理由がねえというのか? 正勝!」
喜平はもう一度、荒々しく床を蹴った。
「謝るのがいやなら出ていけ! この牧場から出て、てめえの好きなところへどこへでも行け! すぐ、いますぐ出ていけ!」
「はあ! いくらでも出ていきますがね」
「すぐ
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