あなたのところへ行きますわ」
紀久子は啜り泣きながら言って、静かに身体を起こした。そして、紀久子は咽んで肩の辺りに波打たせながら、傍らの小卓の前に坐《すわ》り直した。卓の上には、敬二郎の使い残しの紙と万年筆とがあった。紀久子は万年筆を取って、鶏が餌《え》を拾うように首を動かしながら、啜り泣きながら、涙に曇ってくる目を幾度も幾度も押し拭《ぬぐ》いながら、一字一字を植え付けるようにして手紙を書いた。
書き終わると、紀久子はその手紙を敬二郎の遺書と一緒に重ねて畳んで、ふたたび帯の間に差し挟んだ。
「敬さん!」
紀久子はふたたび、敬二郎の死骸の上にどっと身体を投げかけた。
「敬さん! 許してね。わたしもうすぐあなたのところへ行くわ」
紀久子はそして、敬二郎の死骸に顔を押し付け、その手を固く握った。紀久子はふと、敬二郎の手に握られているピストルに気がついた。紀久子はそれを取ってしばらくじっと見詰めてから、なおもそこに弾丸《たま》の残っていることを確かめると、唇を噛み締めながらそのピストルを自分の帯の間に差し込んだ。
紀久子はそして、ある決心の表情を浮かべながら決然として部屋を出ていった
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