たのであったら、かくも悲惨な袂別《べいべつ》を告げることはなかったでしょう。しかし、わたしたちは愚かにも、開墾地の人たちの血と肉と魂とのうえにその愛を築こうとしたのでした。そしてわたしたちは、あなたの父上の負うべき責めと復讐《ふくしゅう》とを、わたしたちの愛のうえに受けたのです。わたしたちがあなたの父上の遺産に執着するかぎり、当然の帰結だったと思います。そしてなお、わたしがあなたから去ってののちも、もしあなたがその呪《のろ》われている財産に執着するなら、あなたの今後の愛も決して幸福ではなかろうと思います。
最愛の紀久子さん!
わたしは最後の言葉として、あなたの今後の愛が、あなた自身の世界に建てられることを希望します。森谷家の遺産はわたしが継ぐべきものでもなく、正勝が継ぐべきものでもないのです。当然、それを受け取るべき人が沢山いるはずです。あなたはわたしがそれを継ぎそうに見えた間はわたしに愛を繋《つな》ぎ、正勝がそれを奪還しかけると急に正勝へ愛を移していきましたが、それは間違いです。財産について回るあなたの愛は間違いです。財産は当然受け取るべき人々にそれを渡し、またそして、正勝との誤
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