しではまったくつまらなく存じ候。ともに飲み、ともに歌って踊りたく候間、さっそくにもお越しくだされたく候――」
「やっぱりね」
紀久子はそう言って、深い溜息を吐《つ》いた。
「行くことがあるものか!」
敬二郎は怒鳴るように言って、白樺の皮をストーブの中に投げ込んだ。しかし、紀久子は真っ青な顔をして、微《かす》かにわななきながら腰を上げた。敬二郎の目は驚異と哀愁との表情を含んで輝きだした。
「紀久ちゃんは行くつもりなのか?」
「…………」
「紀久ちゃん! 頼むから行かないでくれ。行かないでくれ」
「…………」
「紀久ちゃんが奴の言うことを聞かないからって、奴が何かしたらぼくがどうにでも始末をつける」
しかし、紀久子はじっと空間を見詰めて、夢遊病者のようにふらふらと静かに戸口のほうへ歩いていった。
「紀久ちゃん! お願いする。頼むから行かないでくれ」
「…………」
「紀久ちゃん! ぼくはもう、本当に生きてはいられない」
しかし、紀久子はもう魂の脱殻《ぬけがら》のように、黙ってふらふらと静かに歩いていった。敬二郎が抱き止めようとしても、無感情な機械人間のように静かにその手から脱《ぬ》け
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