喜代治が言った。
「夢中になっているかどうか知らねえが、おれが手紙をやれば紀久ちゃんは自分で持ってきてくれる。紀久ちゃんはもう、おれの言うことならなんだって聞くんだから」
「それじゃ、お嬢さまは敬二郎さんがいやになって、正勝さんと一緒になるつもりでねえのかね?」
 彦助爺が言った。
「そんなことはおれの知ったことじゃねえ。論より証拠だ、とにかく、持ってくるか持ってこねえか、見ていれば分かるさ」
「いったい、その手紙っての、どんな風に書くんだね?」
 喜代治がそう言ってテーブルの上の白樺の皮を覗き込むと、開墾地の人たちはいっせいに炉端を離れて、テーブルの周囲を囲んだ。
「手紙か? 普通の手紙だよ。まず――拝啓と書いてな」
 正勝はその文句を言いながら顫《ふる》える指先を固く握り締めて、白樺の皮の上へ無造作に書きはじめた。
「それから――ただいま吾助茶屋にて金子入用のこと相起こり申し候――ということにして。そして――はなはだ恐縮ながら――とまあ、少し敬意を表しておいて、そして――さっそく五百円ばかりご用意なされ、おまえさまご自身にてお越しくだされたく候――。爺さん! これをだれかに持たせ
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