恐怖城
佐左木俊郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)森谷牧場《もりやぼくじょう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)ほんの二、三|分《ぶ》くらいだったわ

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「木+忽」、4−1]木《たらのき》
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   第一章

       1

 森谷牧場《もりやぼくじょう》の無蓋《むがい》二輪の箱馬車は放牧場のコンクリートの門を出ると、高原地帯の新道路を一直線に走っていった。馬車には森谷家の令嬢の紀久子《きくこ》と、その婚約者の松田敬二郎《まつだけいじろう》とが乗っていた。松田敬二郎が牧場の用事で真駒内《まこまない》の種畜場へ出かけるのを、令嬢の紀久子が市街地まで送っていくのだった。
 空は孔雀青《くじゃくあお》の色を広げていた。陽《ひ》は激しくぎらぎらと照りつけていた。路傍の芒《すすき》が銀のように光っていた。
「眩《まぶ》しいわ」
 紀久子は馬車の上に薄紫色のパラソルを開いた。
「冬服じゃ暑かったか
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