「…………」
「竹駒稲荷の效験顕然なる事を知らせることは、間接にもしろ、被告自身の利得を計っているではないか? 第一予審調書に依れば、被告は相当な御礼寄進をなさざれば、直ちにお使いの白狐が飛び出して田畑を荒らし、その他再び病気を発するなど、顕然なる罰《ばち》を受けるものと称して、金銭、米穀、反物《たんもの》、田畑、山林などを寄進せしめ、これを私有し、贅沢なる暮らしをしていたではないか?」
「…………」
「即ち、被告は、神の名により、不当の価格にて医薬を売ろうとしたものであり、人命救助の目的を以って竹駒稲荷の祠《ほこら》を建立《こんりゅう》したものではない。藤原平三に、重クロム酸加里を混入せる酒を呑ましめたることも、自分の利得のための殺人として情状酌量の余地なし。」
[#地から2字上げ]――昭和四年(一九二九年)『文学時代』十月号――
底本:「佐左木俊郎選集」英宝社
1984(昭和59)年4月14日初版発行
初出:「文学時代」
1929(昭和4)年10月号
入力:田中敬三
校正:小林繁雄
2007年7月23日作成
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