つて刀で彫つた所が白く出で行く方法を取る。又簡単な色刷もやるが。
 皆出来る丈け単純化された者である、何かをシンボルしたものである。斯う云ふ物に一番よく木版を生かせる。今迄の多くの人、例へば山本鼎君の木版等、自分には下らないものだ。木版画から木版独特其自身の持つ気分の外には、貧弱な、拙い画がある許りで、其木版独特の気分は誰れでも木版をやつて居る人は共通に持つてゐる、独特の技工もない。
 自分が初めに少数と云つたのは、ムンクやヴアロツトンの事である。少くとも今迄の日本人にはない。
 自分は、自分とは道が異ふが、木版画に於ても、一番に肯定する。自分は今迄見た内でムンク程木版画を生かした者はないと思ふ。
[#地から1字上げ]――「現代の洋画」二十三号より



底本:「思い出の名作絵本 岡本帰一」河出書房新社
   2001(平成13)年8月30日初版発行
初出:「現代の洋画 二十三号」
   1913(大正2)年
入力:川山隆
校正:鈴木厚司
2008年8月28日作成
青空文庫作成ファイル:
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