むべし。
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〔評〕南洲官軍の先鋒《せんぱう》となり、品川に抵《いた》る、勝安房《かつあは》、大久保一翁、山岡鐵太郎之を見て、慶喜|罪《つみ》を俟《ま》つの状《じやう》を具陳《ぐちん》し、討伐《たうばつ》を弛《ゆる》べんことを請ふ。安房素より南洲を知れり、之を説くこと甚だ力む。乃ち令を諸軍に傳へて、攻撃を止《とゞ》む。
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三〇 信孚[#二]於上下[#一]、天下無[#二]甚難[#レ]處事[#一]。
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〔譯〕信上下に孚《ふ》す、天下甚だ處《しよ》し難き事無し。
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三一 意之誠否、須[#下]於[#二]夢寐中事[#一]驗[#上レ]之。
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〔譯〕意《い》の誠否《せいひ》は、須らく夢寐《むび》中《ちゆう》の事に於て之を驗《けん》すべし。
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〔評〕南洲|弱冠《じやくくわん》の時、藤田東湖《ふじたとうこ》に謁《えつ》す、東湖は重瞳子《ちやうどうし》、躯幹《くかん》魁傑《くわいけつ》にして、黄麻《わうま》の外套《ぐわいとう》を被《き》、朱室《しゆざや》の長劒《ちやうけん》を佩《さ》して南洲を邀《むか》ふ。南洲一見して瞿然《くぜん》たり。乃ち室内に入る、一大白を屬《ぞく》して酒《さけ》を侑《すゝ》めらる。南洲は素《も》と飮《いん》を解《かい》せず、強《し》ひて之を盡《つく》す、忽《たちま》ち酩酊《めいてい》して嘔吐《おうど》席《せき》を汚《けが》す。東湖は南洲の朴率《ぼくそつ》にして飾《かざ》るところなきを見て酷《はなは》だ之を愛《あい》す。嘗て曰ふ、他日我が志を繼《つ》ぐ者は獨此の少年子のみと。南洲も亦曰ふ、天下|眞《しん》に畏《おそ》る可き者なし、唯《たゞ》畏る可き者は東湖一人のみと。二子の言、夢寐《むび》相|感《かん》ずる者か。
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三二 不[#レ]起[#二]妄念[#一]是敬。妄念不[#レ]起是誠。
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〔譯〕妄念《ばうねん》を起さゞるは是れ敬《けい》なり。妄念起らざ
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