り。
葢し教育の根底は學校にあり、學校の根底は家庭にあり、而して家庭の根底は家母にあり。嗚呼、將來の國民をして開國進取の民たらしめむか、將た退嬰鎖守の民たらしめむか、國家盛衰の大問題は、一に家母の方寸に决せむとす。我か邦教育の大※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、5−4]渡期に遭遇せる、敷島女子の責任や、重且大なりと謂ふへし。
余か海國民として、教育上今日懷抱する所の意見、此の如しと雖、教育の事は多端、獨り學校と家庭とを以て滿足す可らす。故に學校家庭の内外に論なく、亦其直接と間接とを問はす、苟も海事思想の扶植に資するの擧あれは、余は常に双手を擧けて之を賛成す、况や其殊に婦女を感化するに有効なるものゝ出るに於てをや。近時漸く歴史に小説に、海事を談する者あるを見るに至れるは、余の大に悦ふ所、今又知友上村海軍少佐の、本書を携へ來つて、著者押川春浪氏の爲に、序を余に徴するあり。取て之を閲するに、資料を一種の專門知識に假るの述作たるに關せす、趣向の深遠にして、行文の輕妙なる、虚中に實を寫し、實中に虚を叙して痕跡を見す、其筆力能く我か男兒を奮起せしむると仝時に、亦女子を感動せしむるに足る
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