智者を待て後知らさるなり。
大瀛の水沌々渾々、其勢滔天の如きも、其源を繹ぬれは、潺々たる山間小流の湊合に非すや。葱嶺の山巍然として雲表に聳え、將に天を摩せむとするの慨あるも、其源を究むれは、微々たる路上細塵の集積に非すや。夫の強國の以て雄大を致す所のものも、亦其源を推せは、總角丱たり、紅鬟燦たる、可憐の兒女教育の發展に因するや、幾多の事實之を證して餘りあるに非すや。而して其然る所以のものは何そや、皆克く天に順ふの結果たらさるはなし。然らは則ち、天下の大計知るへきのみ。雄を宇内に稱せむと欲せは、國を擧けて大に女兒教育の法を講し、以て其元氣の本源を開發するに若くはなきなり。今や我邦の教育は、駸々其歩武進むか如しと雖。仔細に其状を察すれは、實に寒心に堪へさるものあり。請ふ内外の實例を擧けて之を證せむ。
回顧すれは今を距る十五年前 我か軍艦筑波の遠く新西蘭に航し、其澳克蘭港を解纜するの前日、艦長は滯港中其市民より受けたる懇迎を謝し、併せて別を告けむか爲め、一士官に命し風波を衝きて一艇を陸に特派せしめたり。而して其艇の、或は波頭に上り、或は浪底に下り、殆と半程を進むや、之と相反して、一艇の帆を張
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