はあたり前のことではないかと思はれるだけのやうです。
越後獅子に「其處のおけさに異なこと言はれ、ねまりねまらず待ち明かす」と言ふのがあります。
これで見ると、どうやらおけさの方が男で待つ方は女ではないかと思はれて來ます。そこへ持つて來て、これについてゐる振が、「そこのおけさに」と言ふ處で男が怪しからんことをする眞似をし、「異なこと言はれ」で女がきまり惡がる眞似をするのなどから考へて、どうもおけさは男のやうに思はれます。どこの方言だか忘れてしまつたのですが、「よばひ」の意味に「おけさ」と言つてゐるところがあります。これもその意味ではないかと思はれるのです。すなはち「起きよさ」の意ではないかと言ふのです。さうなると、「猫の性でじやれたがる」のも男ではないか、その方が適切ではないかとも思はれて來ます。
「お」の字がつくので女だと言ふことにして、「猫の性」のうたから傳説が生れたのではないかと言ふのが私の考です。
[#地から4字上げ](一九二六年六月)
底本:「明星」「明星」發行所
1926(大正15)年7月
初出:「明星」「明星」發行所
1926(大正15)年7月
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