ゝの精神無くば、外國交際は全かる可からず。彼の強大に畏縮し、圓滑を主として、曲げて彼の意に順從する時は、輕侮を招き、好親却て破れ、終に彼の制を受るに至らん。
一八 談國事に及びし時、慨然として申されけるは、國の凌辱《りようじよく》せらるゝに當りては、縱令國を以て斃るゝ共、正道を踐み、義を盡すは政府の本務也。然るに平日金穀理財の事を議するを聞けば、如何なる英雄豪傑かと見ゆれ共、血の出る事に臨めば、頭を一處に集め、唯目前の苟安《こうあん》を謀るのみ、戰の一字を恐れ、政府の本務を墜しなば、商法支配所と申すものにて更に政府には非ざる也。
一九 古より君臣共に己れを足れりとする世に、治功の上りたるはあらず。自分を足れりとせざるより、下々の言も聽き入るゝもの也。己れを足れりとすれば、人己れの非を言へば忽ち怒るゆゑ、賢人君子は之を助けぬなり。
二〇 何程制度方法を論ずる共、其人に非ざれば行はれ難し。人有て後方法の行はるゝものなれば、人は第一の寶にして、己れ其人に成るの心懸け肝要なり。
二一 道は天地自然の道なるゆゑ、講學の道は敬天愛人を目的とし、身を修するに克己を以て終始せよ。己れに克つの極功《きよ
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