を小職に用ひ、其材藝を盡さしむる也。東湖先生申されしは「小人程才藝有りて用便なれば、用ひざればならぬもの也。去りとて長官に居《す》ゑ重職を授くれば、必ず邦家を覆すものゆゑ、決して上には立てられぬものぞ」と也。
七 事大小と無く、正道を蹈み至誠を推し、一事の詐謀《さぼう》を用ふ可からず。人多くは事の指支《さしつか》ゆる時に臨み、作略《さりやく》を用て一旦其の指支を通せば、跡は時宜《じぎ》次第工夫の出來る樣に思へ共、作略の煩ひ屹度生じ、事必ず敗るゝものぞ。正道を以て之を行へば、目前には迂遠なる樣なれ共、先きに行けば成功は早きもの也。
八 廣く各國の制度を採り開明に進まんとならば、先づ我國の本體を居《す》ゑ風教を張り、然して後|徐《しづ》かに彼の長所を斟酌するものぞ。否らずして猥りに彼れに倣ひなば、國體は衰頽し、風教は萎靡《ゐび》して匡救す可からず、終に彼の制を受くるに至らんとす。
九 忠孝仁愛教化の道は政事の大本にして、萬世に亙り宇宙に彌り易《か》ふ可からざるの要道也。道は天地自然の物なれば、西洋と雖も決して別無し。
一〇 人智を開發するとは、愛國忠孝の心を開くなり。國に盡し家に勤むるの道
前へ
次へ
全23ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
西郷 隆盛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング