更に無し。
四 萬民の上に位する者、己れを愼み、品行を正くし、驕奢を戒め、節儉を勉め、職事に勤勞して人民の標準となり、下民其の勤勞を氣の毒に思ふ樣ならでは、政令は行はれ難し。然るに草創《さうさう》の始に立ちながら、家屋を飾り、衣服を文《かざ》り、美妾を抱へ、蓄財を謀りなば、維新の功業は遂げられ間敷也。今と成りては、戊辰の義戰も偏へに私を營みたる姿に成り行き、天下に對し戰死者に對して面目無きぞとて、頻りに涙を催されける。
五 或る時「幾[#(ビカ)]歴[#(テ)][#二]辛酸[#(ヲ)][#一]志始[#(テ)]堅[#(シ)]。丈夫玉碎愧[#(ヅ)][#二]甎全[#(ヲ)][#一]。一家[#(ノ)]遺事人知[#(ルヤ)]否[#(ヤ)]。不[#下]爲[#(メニ)][#二]兒孫[#(ノ)][#一]買[#(ハ)][#中]美田[#(ヲ)][#上]。」との七絶を示されて、若し此の言に違ひなば、西郷は言行反したるとて見限られよと申されける。
六 人材を採用するに、君子小人の辨酷《べんこく》に過ぐる時は却て害を引起すもの也。其故は、開闢以來世上一般十に七八は小人なれば、能く小人の情を察し、其長所を取り之
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