あり。大丈夫僥倖を頼むべからず。大事に臨では是非機會は引起さずんばあるべからず。英雄のなしたる事を見るべし、設け起したる機會は、跡より見る時は僥倖のやうに見ゆ、氣を付くべき所なり。
七 變事俄に到來し、動搖せず、從容其變に應ずるものは、事の起らざる今日に定まらずんばあるべからず。變起らば、只それに應ずるのみなり。古人曰、「大丈夫胸中|灑々《しや/\》落落《らく/\》。如[#(ク)][#二]光風霽月[#(ノ)][#一]。任[#(ズ)][#二]其[#(ノ)]自然[#(ニ)][#一]。何[#(ゾ)]有[#(ラン)][#二]一毫之動心[#一]哉」[#ここから割り注]○明、王耐軒筆疇の語[#ここで割り注終わり]と、是即ち標的なり。如[#レ]此體のもの、何ぞ動搖すべきあらんや。
[#ここで字下げ終わり]

   補遺

[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
一 誠はふかく厚からざれば、自ら支障も出來るべし、如何ぞ慈悲を以て失を取ることあるべき、決して無き筈なり。いづれ誠の受用《じゆよう》においては、見ざる所において戒愼し、聞かざる所において恐懼する所より手を下すべし。次第に其功も積て、至誠
前へ 次へ
全23ページ中20ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
西郷 隆盛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング