思設ざる事變に臨み一點動搖せざる膽力を養には、如何目的相定、何より入て可[#レ]然ものに御座候哉。
[#ここで字下げ終わり]
     南洲 答
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一 猶豫狐疑は第一毒病にて、害をなす事甚多し、何ぞ憂國志情の厚薄に關からんや。義を以て事を斷ずれば、其宜にかなふべし、何ぞ狐疑を容るゝに暇あらんや。狐疑猶豫は義心の不足より發るものなり。
二 至誠の域は、先づ愼獨より手を下すべし。間居即愼獨の場所なり。小人は此處萬惡の淵藪《えんそう》なれば、放肆《はうし》柔惰の念慮起さざるを愼獨とは云ふなり。是善惡の分るゝ處なり、心を用ゆべし。古人云ふ、「主[#(トシ)][#レ]靜[#(ヲ)]立[#(ツ)][#二]人極[#(ヲ)][#一]」[#ここから割り注]○宋、周濂溪の語[#ここで割り注終わり]是其至誠の地位なり、不[#レ]愼べけんや、人極を立ざるべけんや。
三 知と能とは天然固有のものなれば、「無知之知[#(ハ)]。不[#(シテ)][#レ]慮[#(ヲ)]而知[#(リ)]。無能之能[#(ハ)]。不[#(シテ)][#レ]學[#(バ)]而能[#(クス)]」[#こ
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