こから割り注]○明、王陽明の語[#ここで割り注終わり]と、是何物ぞや、其|惟《たゞ》心之所爲にあらずや。心明なれば知又明なる處に發すべし。
四 勇は必ず養ふ處あるべし。孟子云はずや、浩然之氣を養ふと。此氣養はずんばあるべからず。
五 事の上には必ず理と勢との二つあるべし。歴史の上にては能見分つべけれ共、現事にかゝりては、甚見分けがたし。理勢は是非離れざるものなれば、能々心を用ふべし。譬へば賊ありて討つべき罪あるは、其理なればなり。規模《きぼ》術略吾胸中に定りて、是を發するとき、千仞に坐して圓石を轉ずるが如きは、其勢といふべし。事に關かるものは、理勢を知らずんばあるべからず。只勢のみを知て事を爲すものは必ず術に陷るべし。又理のみを以て爲すものは、事にゆきあたりて迫《つま》るべし。いづれ「當[#(ツテ)][#レ]理[#(ニ)]而後進[#(ミ)]。審[#(ニシテ)][#レ]勢[#(ヲ)]而後動[#(ク)]」[#ここから割り注]○陳龍川、先主論の語[#ここで割り注終わり]ものにあらずんば、理勢を知るものと云ふべからず。
六 事の上にて、機會といふべきもの二つあり。僥倖の機會あり、又設け起す機會あり。大丈夫僥倖を頼むべからず。大事に臨では是非機會は引起さずんばあるべからず。英雄のなしたる事を見るべし、設け起したる機會は、跡より見る時は僥倖のやうに見ゆ、氣を付くべき所なり。
七 變事俄に到來し、動搖せず、從容其變に應ずるものは、事の起らざる今日に定まらずんばあるべからず。變起らば、只それに應ずるのみなり。古人曰、「大丈夫胸中|灑々《しや/\》落落《らく/\》。如[#(ク)][#二]光風霽月[#(ノ)][#一]。任[#(ズ)][#二]其[#(ノ)]自然[#(ニ)][#一]。何[#(ゾ)]有[#(ラン)][#二]一毫之動心[#一]哉」[#ここから割り注]○明、王耐軒筆疇の語[#ここで割り注終わり]と、是即ち標的なり。如[#レ]此體のもの、何ぞ動搖すべきあらんや。
[#ここで字下げ終わり]
補遺
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
一 誠はふかく厚からざれば、自ら支障も出來るべし、如何ぞ慈悲を以て失を取ることあるべき、決して無き筈なり。いづれ誠の受用《じゆよう》においては、見ざる所において戒愼し、聞かざる所において恐懼する所より手を下すべし。次第に其功も積て、至誠
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