ではあるまいか。私達が探偵小説を愛好するのは、外でもない、その『尤もらしくないこと』が好きだからなのだ」
作者はまずこのように探偵小説の興味の根本に簡単に触れておいてから、尤もらしくない、こじつけの王座にあるところの密室内の犯罪を取上げる。
「秘密の通路に類するアンフェアな解決法は一切廃して、密室犯罪の解決法を分類して行くと、大体次のようになってくる」と断って以下がその分類。
(一)、密室内に行われたことが、実は殺人でなく、偶然に起ったことが重なり、恰度殺人が行われたように見えるもの。――一例を挙げてみると、部屋が密閉される前に盗賊がはいって、格闘があったり、負傷したり、家具が破壊されたりなど、つまり殺人事件の際争いでもあったと思わせるようなことが起る。後刻、今度は本当に密室となった部屋の中で、その部屋の中の人が偶々過って死んだとする。すると、実際は時を距てて起ったこれらの出来事が、同時に(即ち密室の中で)行われたもののように考えられるのである。この場合の致命傷は多く頭部の打撲傷で、棍棒かなんかで一撃を加えられたもののように考えられるのだが、実際には何か家具の角で打ったというような
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