の杉大門の御主人がお見えになりましたが――」
次の間へ手をつかえておしのが取り次いできた。
「エ、杉大門が。そりゃ珍しい。オイすぐこっちへお通し申せ。そうして小圓太、お前はな、早くお神さんやおしのを手伝って酒の仕度を」
いうかとおもうと、早くも上がってきた頬に刀傷のある目の険しい五十|彼是《かれこれ》の渡世人上がりの四谷杉大門の寄席の主へ、
「よウよウ珍しい珍しい兄貴、相手ほしやでいま困ってたとこなんだ、さ、今夜ゆっくり遊んでってくれ、夜明かしで飲み明かそう」
たちまち外面《そとづら》のいい圓生は相好を崩してこう迎えるのだった。
いざこざ[#「いざこざ」に傍点]なしにすぐお酒がはじまってしまった。やったりとったり[#「やったりとったり」に傍点]――杉大門もなかなかの飲み手で尽くるところをしらなかった。さっさ[#「さっさ」に傍点]とお神さんはねてしまった、九つ近くになって、やっと席亭はかえっていった。
「すまなかったね昨夜、あんな剽軽《ひょうきん》者が飛び込んできてしまって、さ、今夜はやって上げますよ」
とても駄目だとあきらめていたのに、思いがけなく晩酌のとき、またこういいだ
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