入れさせるときがきた、そうしてあかあかとその字を灯の中へ浮きださせてやるときが――。
「ねえ不思議じゃないか、ひとつひとつ引道具のようにいやなことが消えてなくなっていく。そしちゃ、一段一段とそのたんび私の看板がせり出しのように上がっていく。いよいよたくさん勉強しなけりゃいけないのはもちろんだけれど、それにしてもいいのかなあこれで、ほんとうにいいのかなあ私ァこれで」
うれしそうに辺りをぐるぐる見廻しながらまたコップを。そのあと華奢な象牙の箸でギヤマンの大鉢の中の銀のような鱸《すずき》の洗いのひと切れを、さも美味しそうに口へ運んだ。
「……」
やっぱり小糸は肯いた、月の出のように顔全体をかがやかすことによってのみ、ひたすら、心の喜びのたけをあらわして。
「で、ねえ……」
しばらくほれぼれと圓朝は寂しい美しい目の前の顔を見守っていたが、
「やる、とにかく、やる、手一杯ひろげられるだけこの手を大きくひろげて、もっと派手に、もっと華やかに私は売ってみせる。仲間の悪口なんか、もう耳にたこ[#「たこ」に傍点]でてんで[#「てんで」に傍点]気になんかならなくなってしまったんだ」
薄青いなおし[
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