いる、が、しかしだね、自分より弟子のほうが売れるのまでは望んでいねえって。味わってみねえ。ねえおい、いかにも人間らしい弱味のある趣の深い言葉じゃねえか。俺なんかいい塩梅にいまでも昔師匠の売れたほどは売れていねえし、また多少なりとも売れてきたのは師匠の死んだあとだったから憎まれねえでもすんだけれど……」
もういっぺん笑って、
「つまりこの師匠の心持、つまり凡夫の心持って奴を、よくよウく圓朝さん、いま考えてみる必要がありゃしねえか、そうしたら……そうしたらお前何にも……」
「分り……分りました」
満面をかがやかして圓朝は、勢いよく取り上げたお銚子にありったけ[#「ありったけ」に傍点]の感謝を含めて文楽のほうへ。
サバサバと、すがすがと、ほんとうに気が晴れ晴れと大きくなってきた。またひとつ、いや二つ三つ、ことによるともっともっと余計いっぺんに年を取って悧巧になれた感じだった。
「だから、だからよ、お前」
満足そうに酌いだお酒を口へ運んで[#「運んで」は底本では「連んで」]、
「いまの喧嘩は仕方がねえ、それ川柳点にもあったじゃねえか、死水《しにみず》をとるは兼平《かねひら》一人なりって
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