て頂けることになるだろう。ありがたいことである。
 親しく圓朝の話術に接し、ことごとく傾倒されていた故を以て我が江戸文学の恩師川柳久良伎翁には、見事な題簽《だいせん》を書いていただいた。好箇の記念たらしめたかったからである。また口絵の圓朝像は上野鈴本演芸場喫煙室内に掲げられているもの。『牡丹燈籠』異装本三種は明治大正昭和の絶版文学書を一手に渉猟販布している大森の古書肆植田黄鶴堂君の好意で特に貸与してもらったもの。行燈に圓朝の句を題した見返しある和装本が初版で、左側の序文は「研究」の中でも屡々いった春のやおぼろのそれである。桂文楽君所蔵の圓朝の賀状の宛名人は現下舞踊界の長老花柳壽兵衛翁である。これに拠ると圓朝は没前年、佐久間町に住していたものとおもわれる。これは私には初耳。壽兵衛門下太兵衛君から文楽君へ贈られたものを借りだしてきたのである。そうして撮影は一枚看板を除く総て都下舞踊界舞台撮影を以て第一人者とされている小山写真館主の極めて良心的な製作にかかる。毎時ながらの水島爾保布画伯の芳情とともに、それぞれ御礼を申し上げてやまない。
[#地から2字上げ]作者



底本:「小説 圓朝」河出
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