かでは日本の女が浴衣がけでゐると罰金をとられるとかいふことだ。
さういふところはあるだらう。といふよりさう成りやすいところがあるかも知れない。但し本来の日本の――女に就いていふ――浴衣がけの姿は、決してさういふ無作法がつきものゝ性質のものではなく、桑港あたりで偶々罰金をとられるのは、たゞその辺の連中が浴衣を浴衣らしく着こなさないからのことであらう。もし浴衣をうまく着る、つまり本来のこの服装の美感に添うて正当に――とは実は平凡に、着る場合には、日本の夏裳束は危なげでゐながら、然も決して危なくないものである。
例へば今いつた源之助のお梶をもう一度よく見ると、この役はかなりはげしく立ちまはりをするが、殆んど胸はおろか、肘も、はぎも、三寸とは不作法に着衣の外へ出さない。只いつも涼しい襟足と、それから身体全体へかけての線を、流暢にのばして見せるだけだ。――といふのは、さうすると初めて美しいから。といふのは更に、浴衣はさう着られるといふことを物語る。さう着れば美しくなり、それが本当だといふことを理窟以上に語る。
それ故この美芸に化された巧みな扮装の場合を不取敢例にとつたわけだが、この点は、外
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