茶屋なれども、これへのハネバシは大門外の左右の太線(第一図)の位置からつくといふことになります。廓《くるわ》はそのぐるりを大溝《おほどぶ》で囲つてゐました。この溝にハネバシがあつたわけで、ぼくの今日の見聞はa―b―c―dと歩いたのです。dはおとりさまです。
[#「第一図」のキャプション付きの図(fig47735_01.png)入る]
 昔いろはの第九支店(浅草区地方今戸町九十三番地)が×の位置にあつた。そのころ△位置あたりのチヤチなはねばしをぼくは知つてゐたのでしたが、それはほとんどドブのふたの如く、長さも短かくて面白くありません。思ふにハネバシとしては、これはすでに末期症状のものでしたらう。
 はねバシらしいはねバシは、所詮一葉ゑがくところの、大音寺前寄りの方でせう、こゝは(b―c)今行つてもそゞろに地形でわかるが道路から家へと一たん土台が石垣積みになつてゐて、石垣の高さはぼくのせい位あります。といふのが廓の内外へかけてこゝに截然と段階があつたので、この下のさかひのところを、水が流れてゐたわけです。(今はコンクリートですつかり埋めてあつて、この上をわれわれが歩いてゐるのです)
 此の
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